泣きたいなら好きなだけ泣けばいい、
枯れるコトなんかない涙をいつまでも流していいと思う。

笑いたいなら笑えばいい、
それこそ、笑いすぎて腹筋が筋肉痛になるくらいの馬鹿笑いでもいいと思う。


好きならば、それが恋と感じていい。
たとえ、それが周りにとってちっぽけで些細なものであったとしても、


そう思うのが本当のあたし。


そんな単純な思考、いつの間にか何処かに投げ捨てて忘れてた。



思考の上だけは随分大人の癖に、

本当はただ、自分が子供くさいコトを隠していたかった。








      素直感ずる時










「好きなんだけど」

「え?」



ドラマのように特別ロマンチックなシチュエーションなんかじゃない、

フランス料理のフルコースの代わりにお通しの枝豆とフライドポテト。

味の知れたワインの代わりにビールとチューハイ。

洒落たホテルのレストランの窓辺じゃなくて、いつもの馴染みの居酒屋の小上がり。


唯の仕事仲間だと思っていたのに、
唯の気の合う飲み友達と思っていたかったのに、


真っ直ぐな瞳があたしのコトを逃がさなかった。


「からかわないでよ」

笑うあたしにさえも表情を変えない。

いつもの冗談じゃないの?

あたしなんかの何処に魅力を覚えるの?


心拍数が異常なまでに上がった。

体温までが上がったような錯覚。
もしかしたら体中の血液が沸騰してしまうのではないかと思うくらいの、


熱い熱い想いが其処にある気がした。


いつも、それに純粋に従いたかったのに、あたしは従えなかった。


あたしは弱い人間なのに。

「馬鹿なコト言わないでよ」

そう言ってあたしはグラスにいっぱいに注がれていたチューハイを一気に煽った。

アルコールが僅かに喉を妬く。



「何? もう酔っ払ってるの?」

けど彼は素面だった。



「酔っ払ったら冗談に思われるだろうから、飲む前に言ったんだけど」

前に置かれてるビールは確かに口をつけられた跡がない。
シュワシュワとグラスの中で仕切りに気泡が出来てはパチンと消える。


「・・・・・」

口ごもるあたしに、首を傾げる。

本当は、あたしだって気の合う友人以上の気持ち持ってることくらい自分で知ってた。


けど、あたしは自信ない。

高校時代の先輩、幼なじみ、
大学時代の同じゼミの同級生、サークルで知り合った違う大学の学生、
そして、社会に出て知り合った上司。

どんな人と付き合っても長続きしたコトない。

恋人に好かれる自分でいたい、

恋人に話を合わせて、趣味を合わせて、

いつも自分を作るコトに疲れていた。

けど、嫌われるのが嫌で飽きられてしまうのが怖くて、やめられなかった。


でも別れを告げられる時はいつも同じ科白だった。


―・・・君と一緒にいると息が詰まるんだ―

特に最悪だったのは2ヶ月前まで付き合っていた会社の上司。
彼はその後まもなくして他の子と付き合い始めた。


何が悪かったのかわかってる。

けど今度こそは失敗したくないから、同じコトを繰り返していた。

おかげであたしはいつの間にか臆病者になった。



いい子でいるのは正直苦痛。


だから、もしこの恋がそう同じような結末になるのであるなら怖いから、唯の飲み友達でいたいと思ってるのに。


「あたしはあなたと付き合っても、・・・」

いい女になれるなんて思わない。

釣り合いの取れるような柔らかい性格のあたしじゃない。



「合わせる必要はないと思うよ? 君は君でしょ?」


そう言って、口にビールを運んで、



「知ってたよ、濱田主任と付き合ってたとき、無理して笑ってたろ。

付き合ってから急にヒールの高い靴を履き始めて、いかにも“デキる女”になろうとしていたの」


大変だったでしょ? そう付け加えて笑った。


「俺はそうするよりも、今みたいに気取らないで大酒飲みで枝豆好きな君のほうが君らしいと思うし、好きなんだけどな」

・・・本当、これじゃ愛の告白にも限度があるよな。

その髪をわしわしと掻きながら、少し豪快に笑う。



「・・・馬鹿」

そう口から皮肉るような言葉が出た。

あたし、可愛くないかもしれない。



「うわ、可愛くないなぁ、こっちは真剣なのに」



けど、心は今までにないくらい暖かくて、

少し幸せを感じた。


「ありがと」


ようやくなのかもしれないけど、あたしの居場所を見つけられた気がした。

あたしにとって、あたしがあたしでいられる場所。





見つけたのは、着飾る必要がない馴染みの居酒屋一番奥の小上がりの席。







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いつも来ていただいてる皆様へ。

サイト運営を始めて早2ヶ月。 本当にあっという間でした。

当初は、サイト運営しても見てくれる人なんているのかな、なんて考えていたけど、こんなにも多くの人たちのおかげでここまで紅は続けることができました。


本当にありがとう。


この小説は紅からこのサイトに来ていただいている皆様全ての方へのプレゼントです。

この小説に限りお持ち帰り自由です。

もしも持っていこうかななんていう奇特な方いらしたら嬉しいです。

報告とかいただければなおさらのコト・・・・











○。あいざわ 紅。○




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Benithmのあいざわ紅様から、5555Hitフリー小説を お言葉に甘えて、遠慮なく頂いてきました♪
ほのぼの恋愛文というのは、書けないので、本当にあいざわ様の恋愛文にはため息ばかりです☆
ひさしぶりに恋をしたくなりました(笑)
掲載もすんなりOKしてくれた、太っ腹な友人・あいざわ紅様に感謝です(@¬@)v