あたしの心の中で、拓也さんの占める割合はかなり大きい。

 そう、感じた1週間。








ずっとそばにいて・・・











 先週の週末のコト。


「朋、俺、週明けから出張なんだ」

 一緒にソファーで寛いで言っていた拓也さんの言葉が、

 こんなにも懐かしく感じてしまう。



「出張?」

「うん、しかも海外、イギリス」

 地球儀ではほんの数10pだけど、ずっとずっと遠い場所。

「安心して、1週間で帰ってくるから」

「うん」

「すぐ帰ってくるから」

 小さい子供にするように、頭を撫でる。



「帰ってくるときはいつもみたいに部屋で待ってて、ね」





 あたしは、1週間なんてあっという間。


 拓也さんはすぐ帰って来てくれるんだし、

 寂しくなることなんてない。




 なんて、ちょっと簡単に待ち構えていたんだ。







 拓也さんが“出張”に出かけてしまってから、1週間。

 何も連絡のなかった1週間。

 多忙すぎて余裕がないんだと思う。


 慣れない異国の地なんだから仕方ないよ。

 そう思いながらも、メールの一つもないコトにちょっと横暴過ぎじゃない?、なんて膨れたコトもあった。



 けど、もうそんな力もない。





「・・・拓也、さん・・・」



 1週間ぶりに来た拓也さんの部屋。





「・・・いつもなら、もっと空気があったかいのになぁ」

 拓也さんが居ないからなのか、

 あたしが部屋に1人なのかはわからないけど、



 ひんやりとした空気が部屋に籠もっている感じがした。



 なんでだろう?

 考えても、その答えは返ってこない。



 少し広い拓也さんの部屋を見渡すと、そこにはいつもは眼に入らないたくさんのもの。

 使い古したペン、僅かに埃の被った椅子、使われていない分厚い本。

 つい、1週間前には被らなかったであろう埃。






 それは、拓也さんが今この場に、あたしの側にいないコトを簡単に証明してくれた。




 上手にクッキーが焼けたとき、拓也さんにすぐ食べて欲しいなんて思った。


 友達と一緒に買い物に行って、可愛いキャミソールを買ったとき、誰よりも拓也さんに見せたいと思った。


 1週間、全く鳴らなかった拓也さん専用の着メロ。


 日にちが経てば経つほど、

 朝も、昼も、夜も。


 思考回路は拓也さんいっぱいで埋まっていった。






「・・・拓也さん、すぐ帰るって言ったじゃない・・・」



 あたしは、少しでも拓也さんを側に感じたくて、

 ベッドの中央に座った。

 いつも過ごす場所。

 きっと、拓也さんが一番、無防備でいられる場所。


 まだ少しだけ残る、拓也さんの薫り。








「・・・何で、帰ってきてくれないの」



 大事な仕事なのはわかるけど、わかるけど。

 けど、拓也さん・・・。



 ベッドからは澄んだ空に月が見えた、三日月。



 白く輝き、ふんわりと温かみを持っているような、そんな感じ。

 そんなところも何となく、拓也さんに似ている気がした。



 ちょっと子供扱いしながらも、優しく包んでくれる。





 なのに、今はその本人がここには居ない。





「・・・遅いよ、拓也さん」


 もう、我慢できないよ、ねぇ。

 けど、今のあたしに出来るのはあの玄関が拓也さんに開けられるコトを待つのみ。



 時計の針が静かに進んでゆく。



 寂しいよ。

 なんで、こんなにも哀しくなるの?












「・・バカ、だなぁ・・・」

 気付けば、背中に温かみ。


「・・・たった、1週間空けただけなのに泣いちゃうなんて、小さい子供じゃないんだから・・・」


 皮肉めいた言葉。





「・・拓、・・・也さん・・・」

 それと反対の温かい優しさ。

 今だって、後ろから拓也さんがぎゅうっとしてくれてる。


「こんなになっちゃうなら、今度から連れて行かないとダメ、かな?」


 あたし、この温もりを待ってたの。







「遅いよ、もぅ・・・・っ」


 言葉が先か、

 拓也さんの肩を押し、組み敷いたのが先かわからない。

 ただ、夢中になって唇を押しあてた。




 たった1週間、

 けれども、すごく長く感じた1週間を埋めるように。






「朋、満足した?」

 ちょっと、冗談交じりに拓也さん。


「ううん、満足しない」

 両腕を拓也さんの首に回して、


 ゆっくりと一息ついて、


 あたしよりも少し高い位置にある拓也さんの双眸を、じっと見つめた。

 当たり前だけども、何も変わってない。

 その薫りも、その目も。


「朋。俺の目には、朋の姿が映ってる?」

「・・・うん、映ってる」

 言い過ぎじゃない。

 あたしのコトを愛おしそうに見つめてくれる、拓也さんの優しそうな表情。

 その拓也さんの瞳に映る、あたし。


「寂しかったの・・・」

「うん」

 拓也さんは少し上体をあげながら、あたしの背を抱いた。

「・・・メールも、電話もできないし・・・」

「うん・・・」

「それに、」

 こうやって、触れることもできなかったもの。



「ごめんね」

 拓也さんの指が、あたしの頬を滑る。

 涙を拭う指。

 その優しすぎるカオに弱い。



「もう、寂しい思いはしたくないよ」

 もう、不安にさせないで。



 もう、不安にしないと誓って。









「安心して。俺はずっとそばにいるから」






 お願いだよ。


 ずっと、そばにいて。



















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1周年、皆様には本当にお世話になりました。

その感謝の思いをこめて、当サイトの朋ちゃん&拓也さんのカップルで、フリー小説を書いてみました。

ちょっと、若干、ビターなんですが。

でも、休み休みながらもこのサイトが1年続くことができたのは皆様のおかげです。
本当にありがとうです。

お持ち帰り自由です。もし、持って行ってやろうと言う奇特な方がいたら嬉しいな。







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ってことで貰ってきました(笑)
本当に恋愛文を書かせたら、あいざわは甘いのやらビターなのやら、色々書けて羨ましいです。
そして一周年にして私より作品あるしv(←笑い事じゃない^^;)
今後もマイペースで色々な恋愛模様を見せてくださいませ☆