「ワリィ、ちょっと用事が」
「俺、一人で食うわ。考え事が」
「レインたちと食事?そりゃいいな、行って来い」
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「チボデー最近どうしたのかしら」
「何か隠し事でもあるのかな」
「今度久しぶりに皆で食事に行こうか。その時に聞いてみよう」
「さんせ〜い」
皆さんには、どうしても苦手なものってありますか?
これは、たった一言『苦手だ』と言えなかったがために酷い目(オオゲサ)にあった男の人の
話。
たった一言
ネオ香港の、とある有名なレストランの前でその事件は起こった。
4人の美女を従えた、ネオアメリカの期待の星・・・
そんな色男が、往来の人も気にせず口げんかに明け暮れていたのだ。
「チボデー、いい加減にしてよ」
シャリーが流麗な瞳をきりきりと吊り上げて男をねめつける。
彼女程ではないとはいえ、他のギャルズも又、非難の色をうっすらとその顔に浮かべていた。
「うるせぇな!!ほっといてくれよ!!」
チボデーも負けじと眉間にしわを寄せて、睨み返す。
4対1ではなかなか、相手を引かせるような威力は湧き出さない…。
それに、彼女達は『母親』なのだ。
チボデーは自分が結局彼女達に敵わないことはよく知っていた。
「なんで私達と一緒にご飯を食べるのがそんなに嫌なの!?」
「嫌だなんていってねぇだろ」
「私達、チボデーの母親代わりなのよ。家族なら一緒にご飯食べるのが普通じゃない」
ここ最近、チボデーはギャルズと一緒に食事するのを嫌がってるのか…
朝昼晩、と食事時になっては何時の間にか姿をくらませるのだ。
彼の健康管理まで受け持つ彼女達にしてみれば、はなはだ気に入らない。
今日は彼をどうにか捕まえて、一緒に人気レストランへと繰り出したのだ。
なのに、チボデーは「お前らだけで行け」と逃げようとしたのだった。
「ちょいと理由があんだよ。その内はな」
「その内っていつよ!!!」
話すから、と続ける言葉尻を捕らえて、彼女達が詰め寄る。
苛立ち、思わずチボデーは叫んでしまった。
「俺にも俺の事情があんだよ!家族だってお互いに内緒にしとくこともあんだろ!!
いつもいつも4人がかりで詰め寄ってきやがって!俺一人仲間はずれかよ!
大体なんだ、ハハオヤハハオヤって!!俺はマザコンじゃないぞ、
・・・」
其処までいって、やっとチボデーは己の失言に気づいた。
ギャルズが計8個の瞳をうるうると大きく見開いている。
「あ・・・いや、その。。。」
口が引きつり、慌てて繕おうとするが、
バチーーーーーーンン!!!×4
「「「「チボデーの馬鹿〜〜〜〜〜!!!もう知らないっ!!!!!」」」」
ばたばたばたばた・・・
もともと賑やかな往来だったが、それでもこれ以上ないほどの絶叫と足音と、ビンタの音は
よく響いた。
ついでに言えば、美女に色男が吹っ飛ばされるというのは余計に人目を引いた。
「う、うう〜〜〜ん・・・(@@;」
チボデーが破れかけた鼓膜と、彼女らが張り倒した頬、両方の痛みに気絶したのは、
周囲の好奇と呆れの視線から己を守るには逆によかったかも知れない。
そして、目覚めた時、勿論彼女達は居なかった。
「ワリィことしちまったなぁ・・・けど、やっぱ言えねぇよ…こんな恥ずかしい事」
ガンガンする頭と口とを押さえながら、チボデーは最近足繁く通っている場所へと
とぼとぼ歩き始めた。
後に、ホントの事を話さずに思わず怒鳴ってしまった事を後悔することとなる。
やがて彼の目の前に、白い建物が現れた。
書いてある文字は・・・漢字だからチボデーには読めない。しかし看板のモニュメントは、
其処が何の建物かをちゃんと示していた。
「おや、いらっしゃい・・・チボデーさん」
「わりぃな。いつものヤツ、ちょうだい」
「はいどうぞ。…まだ、いってないのですか?悪化しちゃいますよ」
「…分かってんだけどさ…やっぱ恥ずかしくて。あいつらなら、一緒に来たがるだろうし」
「しかし、一人で行くとなると」
「うるせぇなっ!!(///)」
++++++++++++++++++
「びど〜〜〜〜いいいい!!えーんえーん…」
ギャルズ4人の中で子どもっぽいといったらまずバニーだ。
文字通り滝のように涙を流し、お姉さん役のシャリーに泣きつく。
家に帰る道々、シャリーは宥めるようにその頭を撫でた。
勿論彼女が心配だからだが、公共の路上で大の大人が泣き叫んでいるのが恥ずかしい気持ちも
あった。
「…それにしても何なのかしらね」
ジャネットがポツリと呟く。
「チボデーがあたし達を嫌いになったのよぉおお〜〜」
ぐすぐす。
「そう・・・なのかしら」
「そうじゃなきゃ、『ママ』を追い出すわけ無いじゃな〜い」
「最近、彼、何かあった?」
「そんなに会話してない、かな、ここのとこ」
お互いに顔を見合わせるが、さっぱり分からない。
「キャス、レストラン行く道でどんな会話してたか覚えてる?」
「う〜ん、なんかそわそわしてたけど。別に普通だった」
「そわそわ、ねぇ」
シャリーが顎に手をあてて考え込むようなポーズをした時、
「女が出来たのよっ!!」
「ハァ!?」
だから、彼女の手料理が食べたくて、あたし達とご飯食べるのがおっくぅになったのよぉ〜。
涙とはな○ずで顔をぐちゃぐちゃにしたバニーの悲鳴が、3人の鼓膜に響いた。
++++++++++++++++++
「女、ねぇ」
ごそごそ彼の荷物を ― 内心、申し訳なく思いつつ ― あさりながら、ジャネットが呟く。
「別に、それならそうと私達に言いそうなもんだけどね」
「まさか!だって私達のことウルサイって言ってたじゃない」
「まぁたしかに、あたし達にからかわれるのが分かってて、言うかって言ったら微妙ね」
取りあえずバニーの『女が出来た説』を採用し、(どっちにしても何の手掛かりも無いので)
なにか証拠とかないものか、と4人は家のがさいれをしていた。
「チボデー、あたし達がヤキモチでも焼くと思ってるのかもよ」
「別に邪魔したりしないのにね」
クロゼットの服のポケットをひっくり返しつつ、シャリーとキャスが返事を返した。
バニーは、二人の言葉に不満を募らせる。
「…二人は、チボデーが誰かを好きになっても全然平気なの?」
「…そりゃ…」
「ちょっと、さびしい、けどさ」
しかし、いずれ自分達の中か・・・それ以外か、とにかく誰か一人を選ぶ日は来るだろう。
自分達に出来ることは、精一杯祝福してやることだ。それが家族の役割だ。
「…でも、別に止めたって結局はチボデーの気持ち次第でしょ」
「私達、最初に決めたじゃない。誰が彼に選ばれても、恨みっこナシ。5人一緒だって」
しんみり・・・。
「…そっか。そうだよね」
「じゃ、まぁ…ママとして、後悔の無いよう、精一杯の愛情を送りましょうね」
「?ジャネット、なんでそういう話に・・・」
「あ・・・」
一同が、ジャネットの探し出した写真に集中する。
チボデーの荷物のポケットに入っていた、3枚の写真。
「きれいな人・・・」
「本当のお母さん、だね」
「こっちはあたし達との記念写真ね」
「その二枚、ジャケットのポケットにも入ってるわ」
「…じゃあ、チボデー、私達のこといつも肌身離さず持っててくれてるんだね」
「そして、最後の一枚…」
「・・・ふ〜ん、結構美人じゃない」
きゅうぅ〜〜〜〜ん・・・・と胸が苦しくなる。
「…悪いことしてしまったわね」
「チボデーは、私達の恩人なのに…子どもっぽかったわね」
「誰だって、秘密くらいはあるもんねぇ」
「どうやって謝る?」
一同の視線が、再び写真へと戻った。
「ネオ香港に来てから、中華料理ばっかりだったし」
「ここは一つ、私達で故郷の味をプレゼント!何てどう?」
「ママの味♪って?」
「食べ物でケンカしたんだし、いいんじゃない?」
「決まり!!」
いそいそと、一同はキッチンへ向かった。
「チボデーに、おめでとうって言わなきゃね」
「何時でも帰る場所は用意しておくってね」
「どんな女性かなぁ・・・チボデーが見初めた人なら、すっごくいい人だよね」
「やっぱ、ちょっとは焼けるわね」
「大事な『息子』だもんね〜」
何時の間にか、4人の間では『チボデーが恋人を作った』説が本決まりになっていた。
(↑何の証拠も揃っていないのに・・・。)
+++++++++++++++++++++
「今日は、ちょっと食事を抜いた方がいいかもしれませんわね」
「あぁ?何でよ」
「麻酔がかかっていますから」
「そっか。あ〜痛て・・・あいつら、家にいるかなァ・・・」
チボデーは腫れた頬にしっぷをして、家へと帰ってきた。
幾らコンディションが悪かったからといって、4人に当たってしまうなどお門違いにも程があ
るというものだ。
「あ〜あ、なんて言おう・・・余計にこじらせちまったし、こうなったらガマンして自分一人で
行って、最後まで隠しとおそうか・・・」
しかし、何時までも内緒にしておけるかは疑問だ。ぶつぶつ呟きながら、珍しく暗い気持ちで
玄関までのスロープを上がる。
そして扉を開けた瞬間、
パンパンパーーーーン!!
「!?」
「チボデー、お帰り!!」
凄まじいクラッカーの音と共に、4人の満面の笑顔で出迎えられる。
「お、おい、コリャ何の騒ぎ・・・」
呆気に取られて、頭の紙ふぶきを払うことも忘れた。
「んも〜。いいって、もう、隠さなくても」
「あたし達、ちゃんと分かってるから〜」
バニーとキャスが、抱きつきながらウインクしてみせる。
チボデーは、自分の秘密が漏れたかと真っ青になった。
「い、一体どうやって知った!?」
「言われなくても分かってるよ〜」
「あたし達家族じゃない」
「やっぱり恥ずかしいものよね、家族にも言いづらいもんね」
こいつら、エスパーか・・・?
チボデーはがっくりと肩を落とした。明日になったら、問答無用で連れて行かれるに違いな
い。ずるずると引きづられるようにリビングに入る。
そして、ならぶご馳走に口を引きつらせた。
「・・・」
「あたし達、頑張ったのよ」
「アメリカの家庭の味!」
彼女達の笑顔が、今のチボデーには悪魔の笑みにしか見えない。
たしかに、好物ばかりなのだ。
しかし、この状態の口で食えたもんじゃない。
さらに青くなるチボデーに、一枚の写真が差し出される。
今しがたお世話になった女性の写真。今の精神状態ではまさしく死刑執行である。
「なんで恋人が出来たの黙ってたの?」
「・・・は?」
「きれいな人じゃない。黙ってるなんて許せない」
「何の話よ」
「まだシラきるの!怒らないから話してよ」
「ママを悲しませたんだから、今夜のメニューくらい食べてよ」
さあ!と、ずずい、料理が差し出される。
チボデーはフォークとナイフを持ったが、やはり口が受け付けようとしない。
一行に食べようとしない彼に、4人は悲しそうな顔を向ける。
「やっぱ食べてくれないんだ・・・」
「彼女の手料理、そんなに美味しいんだ・・・」
「いや、だから、誤解してるって」
「じゃあ、話してよ!てか、食べてよ!」
「いや、話すのは・・・その」
「さぁ」
「さあ!!」
「〜〜〜〜〜〜☆@★&☆$!!!」
チボデーは、椅子から転げ落ちて手を顔の前であわせた。もう、土下座の勢いだった。
「すまん!!怖いけど歯医者にはちゃんと行くから、今日は勘弁してくれ!!
食べたいんだ、でも歯が痛くて痛くて・・・」
大の大人が歯医者が怖い、削る音が耐えられない、なんて、恥ずかしい!
チボデーは顔を真っ赤にしながら必死に謝った。
そして、
「・・・?」
彼女達が何の反応も返さないので、おそるおそる顔を上げた。
4人はぽかんと彼を見下ろしている。
「・・・歯?」
「あ、ああ。もうすげー虫歯なんだ、俺」
「この写真の人って・・・誰?」
「?・・・痛み止めもらってた、薬屋の人・・・だぜ。知ってるんだろ?」
「恋人・・・?」
「いや、全然・・・薬屋紹介してもらった時にもらった写真・・・」
「じゃあ、最近一緒にご飯食べなかったのは・・・」
「??・・・だから、歯が痛くて、でも歯医者が怖くて、だから痛み止めだけ貰いにいってて。
恥ずかしくてずっと言えなかった、ハイ」
「・・・。」
「・・・?」
「・・・そんなの・・・」
「???」
「「「「最初っから言いなさいよぉ!!!!」」」」
スパーン!!
つっこみの張り手が、再びチボデーの頬を襲った。
*One Day After*
ぢゅいい〜〜〜〜〜〜んんん
「ななななな、なんでお前らが治療室までついてく・・・ぶっ」
「大人しくして!!」
「先生、痛くしてやってくださいね」
「え、で、でも・・・」
「いいんです!あたし達の包容力を、なめたチボデーにはお仕置きしなきゃ!」
悪乗りするバニーに、呆れ顔の3人。
「シャリー、止めなくてもいいの・・・?」
「…まあ、チボデーにも原因はあるしね・・・」
「バニー、半分笑ってるわよ」
この後、チボデーはさらに歯医者が苦手になったとかならなかったとか。
収拾がつかなくなるので<END>(爆)
…なんでチボデーが歯医者ぎらいなんて捏造設定を思いついたんでしょう…
ロマリオの回で、ギャルズに引っ張りまわされる彼を見たからだろうか…?
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youら's 雑文館様のゆうら様より相互記念にssをちゃっかり頂きました!!
「チボデーとギャルズのドタバタ」という、私の無茶苦茶なリクエストを
こんなに素敵なssにしてしまうゆうらさんに感謝!です(^^♪
ゆうらさんのサイトに別バージョンが掲載されていますので、そちらも是非どうぞvv
当サイトへの掲載もこころよくOKしていただけて、本当にありがとうございました!!
2005.7/19